12月1日、新型フェアレディZの発表日。この日午後、早くも納車された新型フェアレディZに試乗した。
横浜から一路、夕暮れの時の芦ノ湖スカイラインを目指した。ルートは、東名高速、小田原厚木道路、トーヨータイヤ箱根ターンパイク、芦ノ湖スカイラインというコースを選んだ。
本文:竹内俊介
写真:
Zcar-World.net
ディーラーから納車されたばかりのフェアレディZのボディは、ブリリアントホワイトパールだ。とにかく、リヤフェンダーの膨らみは今までの国産車にはないほどのセクシーなヒップラインを魅せつけてくれる。フロントフェンダーの膨らみも見る角度によってはなかなかの迫力だ。やはり、スポーツカーはタイヤが四隅で踏ん張っている感覚が大切だ。心配されたボディサイズも今時のスポーツカーとしては、ちょうど良いサイズではないだろうか。
ドライバーシートに座ると、内装の質感が大幅に高くなった点が印象的。特にダッシュボード周りの材質やドアのインナーパネルなどに顕著な進化を感じることができる。先代のZ33フェアレディZは乾燥したプラスチックの感覚があったが、今回の新型Z34フェアレディZの材質は潤いを含んだような感覚の材質になっている。欧州車の内装の感覚にかなり近づいたという印象だ。また、天井の内装も黒になったことで、よりシックなイメージになっている。細かいことだが、サンバイザーやルームランプの処理にも、開発陣のコダワリを感じさせてくれる高級感のある処理になっているのだ。先代までは、ルームランプやサンバイザーはマーチクラスと同じものを使っているのではないかと思ったが、今度のZ34フェアレディZは明確に差別化をしている。
また、意外と重要なことかもしれないが、80年代のクルマを知っている世代にとっては、コックピットから見える、ダッシュボードの奥行きの少なさに妙な親しみを覚えるはずだ。実際以上にクルマをコンパクトに感じさせてくれるポイントかもしれない。最近のクルマはフロントガラスを寝かせているせいで、ダッシュボードの奥行きがかなり深い。新型Zはこのあたりにも初代S30フェアレディZのイメージを残したのかもしれない。こうした細かい配慮は、スポーツカーとして重要な点ではないだろうか。是非、ディーラーのショールームでご自身の目で確認していただきたいポイントだ。
さて、クラッチを踏み、スターターボタンを押す。エンジンに火を入れてみると、アイドリングのサウンドは意外なほど静かなもの。6速マニュアルを1速にシフトし、Zをスタートさせる。街中での乗り心地は悪くない。ショートホイールベース化にともなって乗り心地の変化が気になっていたが、全く心配はなかった。新型Zの乗り心地は、R35 GT-Rのような固さもなく、Z33フェアレディZの初期型にあったようなひょこひょことした落ち着きのなさもない。強いて言えば、Z33フェアレディZにあった「バージョンNISMO」の乗り心地を更に洗練させたような印象だ。ステアリングから伝わる路面の感触もシッカリとしていて、運転する楽しみを予感させてくれる。一方、エンジンはVQ独特のトルクフルなもの。アクセルペダルの踏み込み量に対しても、ごく自然な感覚でエンジンが反応してくれる。先代のZ33フェアレディZから大きく進化した点ではないだろうか。電子制御スロットルを上手く調教したという印象だ。
ただし、静粛性の点においては、タイヤノイズやミッションノイズなどがキャビンに入ってくる。とはいえ、スポーツカーとしては十分に許せるレベルだと筆者は思う。このあたりも、ディーラーの試乗車で確認して欲しいポイントだ。
さて、東名高速に乗ると、新型Z34フェアレディZの良さがよくわかる。乗り心地は、車速の高まりにつれてよりフラットで快適なものになってくる。直進性も全く問題なく、ワダチにハンドルをとられるような感覚もない。
とりわけ、レーンチェンジの際に新型Zの進化を感じることができるはずだ。少ない蛇角でスムーズにクルマは移動する。「あー、スポーツカーに乗っているんだ」と実感する瞬間だ。また、3.7リットルのVQ37VHRエンジンは相変わらずトルクフルで、高速道路は6速ホールドで十分流れをリードすることができる。GTカーとしての素質も十分と言うべきか。
ターンパイクの料金所を過ぎて、新型Zの本領を確かめる。しかし、ナラシをしていないエンジンはアタリもついていないので、あまり無理はできない。
話は変わるが、一般的にトルク型の大排気量エンジンはナラシが重要だ。これはVQエンジン全てにいえることで、1000キロから2000キロ近いナラシをしたエンジンとそうでないエンジンとでは大きな差が生じる。新型Z34フェアレディZのオーナーになったあかつきには、是非とも愛着をもってナラシを行って欲しい。その方法は下記のURLを参考にしていただきたい。
料金所を過ぎて、最初のコーナーに入る。予想以上に新型Zはシャープで、ラフなステアリング操作で思いの他INに入りこむ。「シャープだ」というのが率直な第一印象。ペースを上げてワインディングを楽しんでみると、コーナリング限界が物凄く高いことを思い知らされる。とにかく、グリップ限界が高くタイヤが鳴ることはないのだ。新型Zで、タイヤを鳴らすことは至難の業だと感じた。仮にタイヤが鳴るような車速でコーナーに入れば、恐ろしく高いスピードになることは間違いない。良識ある大人ならば、それが無意味な行為であることはスグにわかるはずだ。
とはいえ、その自分の力量の範囲内においても、新型Zのボディ剛性の高さは実感できる。フロントもさることながら、特にリア周りの剛性の高さが印象的だった。フロントの動きに対して、リアの動きがシッカリついてくるという感覚だ。リアサスペンション自体の剛性もかなり向上しているのではないだろうか。
ステージを変えて、よりタイトなコーナーが続く芦ノ湖スカイラインを走ると、世界初シンクロレブコントロール付ミッションの真価を思い知らされる。最初は、ついついヒール&トウをしてしまいそうになるのだが、慣れてしまうとコレが実にいいのだ。自分でやるよりも、はるかに正確に回転を合わせてくれるし、何よりもブレーキングとステアリング操作に集中できる点がありがたい。走りを楽しむだけでなく、安全でもあるのだ。また街中でもスムーズなシフトダウンができるので、助手席のパートナーに不快な思いをさせることもないだろう。いずれにせよ、R35 GT-RのGR6型トランスミッションのデュアルクラッチシステムも確かに素晴らしいが、「マニュアルでもこの手があったか!」と驚きに近い感動を与えてくれることは間違いない。
ハンドリングは、やはり限界が高くどこまでいけるのかがわからないほど。タイトなワインディングでは軽快感のあるクルマの動きが印象的だった。少なくとも、力量の範囲内ではアンダーステアも、オーバーステアも出ない。ただただ、ひたすら正確にグリップしてくれるという印象である。
一方、エンジンはついついムチを入れてしまったが、残念ながら5,000回転以上の回り方に物足りなさを感じた。やはり、キチンとしたナラシをした上で再度試乗してみたいと感じた。
さて、新型Z34フェアレディZは、日本離れした迫力のエクステリアを手に入れ、内装面での質感も大幅に向上した。走りの質も乗り心地、乗り味ともに向上している。特に、スポーツカーとして重要なのが走りの味だろう。運転する楽しさは、クルマから語りかけてくる何かが必要なのだ。ステアリングを通して伝わるグリップ感、ドライバーの意思に忠実なレスポンス。それが新型フェアレディZにはある。
手の届く範囲に、久しぶりに現れた「欲しい!」と思わせる日産車の登場だ。
この記事へのコメント